あまり考えたくはないのですが、人は「利益」がないと、なかなか他人のためには動きません。それは、不動産仲介業者でも同じで、「お金(=仲介料)」がもらえるから、私たちの代わりに家を買ってくれる人を探してくれます。ここまでは、普通の不動産仲介業者ですよね。

でも、世の中には、「お金」への欲が大きく、依頼人である不動産の売り主が多少損してもいいから、なるべく多く「仲介料」を手に入れるために、法律すれすれのグレーな方法で不動産仲介をしようとする「悪徳不動産会社」がいます。

よくある手口「両手取引」ってなに?

「両手取引」とは、不動産仲介業者が、片方の手で不動産の「売主」と契約し、もう一方の手で「買主」と契約することで、2重に仲介料をもらう取引方法です。実は、アメリカなどの諸外国では、利益相反取引に当たると考えられて禁止されていることも多いのですが、日本の宅地建物取引業法では、明確に禁止されておらず、日本の不動産仲介業者は、売主と買主の両方から仲介手数料をうけとることができてしまうのが現状です。

仲介手数料を2倍にするための「売り止め」ってなに?

悪徳不動産仲介業者が2倍の手数料を欲しければ、売主であるあなたと仲介契約をしたと同時に、買主を自分で探しますよね?でも、探している間に、仲介契約をしてない人が、「この家、買いたい!」と言ってきたらどうでしょう?もらえる仲介手数料が半分になってしまいます。

善良な不動産仲介業者なら、当然売ります。売主は少しでも早く売りたいと言っているのですから…。でも悪徳不動産仲介業者の場合、なんと「もう売れちゃいました!」としれっとウソをつくわけです。それが、この「売り止め」です。そして引き続き、自分の知っているコミュニティで仲介料がもらえるところから買主を探します。

ですから、もちろん売れるまでにかなりの時間を要しますし、売主である私たちは、ほとんどの場合、この悪徳業者のズルい行動に気がつけません。そして、時間ばかりがすぎていくわけです。確実に、売主は不利益をこうむっていますが、その事実にさえもなかなか気がつけないのです。

特に注意しなければならない契約形態は?

このような「両手取引」や「売り止め」を防ぐためには、不動産仲介業者のことをきちっと見極める必要があります。特に、困った状況に陥りやすいのは、契約形態が「専属専任媒介契約」の場合です。「一般媒介」や「専任媒介」の場合は、売主本人が買主を見つけて契約することが可能です。

ですから、あまりにも買主が決まらない場合は、自ら周りの友人・知人に声掛けをしたり、人脈の広い友達などに頼むことができます。でも、「専属専任媒介契約」の場合は、その悪徳不動産仲介業者しか、買主を見つけることができない契約です。私たち売主は、彼らが「両手取引」や「売り止め」をしていたとしても、それを防ぐ手段はありません。

そういう意味でも、特に「専属専任媒介契約」を結ぶ場合は、あらかじめ知っている業者であるとか、取引経験があるとか、確実に「悪徳ではない」という信頼がある場合以外は辞めておいた方がよいでしょう。